飽きないように絵を多めにはさみましたこともあり、結構なサイズとなりました。

あいすみませんが、お盆休みの手が空かれたひと時などにご覧ください。

 

では記事へ。

 

《豆と犬》

 

8月10日は、この存在の誕生日。


彼や彼の仲間達については「アメリカ生まれの可愛らしいキャラクター」程度のイメージしかなかったが、調べてみてその意外な面白さが分かった。

『PEANUTS』の主人公であるチャーリー・ブラウンを完全に食う人気を2017現在も誇る、白黒のビーグル犬スヌーピ—。
彼の名前の「SNOOPY」は「うろうろ嗅ぎ回る、詮索する」と言う意味を持っているそうだ。

でも、身近なものについての調査対応は結構ずさん。


何しろ、飼い主であるチャーリー・ブラウンの、名前を一切呼ばない
言うのは

 

丸頭(まるあたま)の男の子


覚えてないにしろ、呼ぶ気がないにしろ、あんまりな感じと言える。

仲が悪い訳ではなく、留守番を嫌がって「置いて行かないでくれ」とスヌーピーが甘えたり、チャーリー・ブラウンも「ぼくらには一種の合意があるんです…

ぼくの行くところには彼も行く、彼の行くところにはぼくも行く…」と作中で発言したりしている。

不思議な関係性。

不思議と言えば、スヌーピーの存在自体、大変謎めいている
当初からこんなんだった訳ではなく、登場時は四つ足で歩くどこにでも居る様な可愛い子犬だったスヌーピー。

それが数年で、色んな表情を見せる様になる。


やがて二本足で歩き始め踊りだし、挙げ句に変装したり、小説を書いたり、飛行機乗りになったり。
類人猿をごぼう抜きにして進化を見せつけるビーグル犬。

 

 
そんな素敵な彼氏だが、そもそもビーグル種に白黒二色の犬は居ない。
白黒にどうしてもが入って三色になるそうだ。

ビーグル犬についての資料でそのことを知って「へぇ〜」と頷き、しばらくしてハッとなった。

チャーリー
ブラウン(=茶)

スヌーピーにとってチャーリー・ブラウンはやはり同体と言っても良い程の、欠くことの出来ない存在。
だからこそ白黒の三色を、一人と一匹で分け合っている。

ブラウンの語源を調べるとBEAR(熊)と同源、但し熊の語源を調べるとその意味は「茶色っぽいやつ」らしいので、熊が先か茶が先かと、タマゴとニワトリ的な感じになる。


もう一つ、「薄暗い」と言う意味を持つ言葉が語源になっている説もある。

ブラウンは、茶だけでなく褐色鳶色までカバーする単語。
「褐色の大地」等と言う様に、これらの色系統はを表す。

 


ふと、スヌーピーの「白と黒」は明度の差を出して自由に粒子が点滅する様を表すと気づいた。

彼の周辺をよく飛んでいる黄色い鳥達はその点滅の輝きを表す。
 
側にいつでも、明暗の濃淡を調節する、「薄暗」くて「地」に足ついた存在が居るから、安心してスヌーピーも気ままに白くなったり黒くなったり、空を飛んだり出来る。

スヌーピーが何かと空を飛ぶのは、グラウンド(=地)をこよなく愛しているチャーリー・ブラウンとセットになっている存在だからなのだ。

 


彼らのホームグラウンドである作品の『PEANUTS』という題名を、作者のチャールズ・M・シュルツは気に入っていなかったそうである。

「え、自分で付けたんじゃないの?」と驚いたが、彼は当初『Li'l Folks(ちいさな人たち)』と言うタイトルにするつもりで、駄目なら主人公の名前を取って『チャーリー・ブラウン』が良いと思っていた。

ところが、売り出す側の配信会社が勝手に候補を挙げ、その中の『PEANUTS』に決めてしまったのだ。

相当嫌だったらしく抵抗もしているが、まだ業界に入って日が浅い作家だった為、結局お金を出す人達が決定権も持った。

日本では良いも悪いもなく、ピーナツピーナツ。単なる豆の一種でしかないが、アメリカでは違った。

 

 

『PEANUTS』には、「こども」と言う意味がある。
そして「ちっぽけ」「つまらないもの」「取るに足らないもの」「はした金」と言う意味もあるのだ。

ピーナツにも、こどもにも、失礼な話であり、「こども」ではなく「ちいさな人たち」として彼らに敬意を持ち続けたシュルツが、このタイトルを嫌ったのも分からなくもないが、ネーミングに関しては、実は『PEANUTS』で大正解。

 


ピーナツは変わった植物で、花が終わった後、子房柄(しぼうへい)を地中に延ばし種をつける。
花が落ち、地中で実を生むので、「落花生」と呼ばれる。

子房が発達して(さや)や種子を形成するのに、「光に当たらないこと」「水の供給が十分であること」が必要な為で、土の中に入らなければそれが出来ない。

 

暗闇と水、そして土に潜る時の「抵抗」が必要とされる。
 「抵抗」による刺激が植物ホルモンのエチレンを発生させ、それが莢と種子の生成に欠かせない。

ピッチャーとしてチームの一員でありつつ、チャーリー・ブラウンが何故チームの監督もしているのかが分かる。

 

彼は様々な個性を持つ彼のチームメイトが、地中のピーナツのように健やかに育まれて行くのに寄り添いそれを観察する係なのだ。

彼らの元にも様々な「抵抗」が押し寄せる。そしてそれが各々の成長にとって大切な糧となる。
『PEANUTS』精神性の高い哲学的な作品だと評されることもあるが、確かに不覚者の手による作品の中では群を抜く

それはシュルツの内側に、チャーリー・ブラウンに通じる、男性女性を超えた母性愛があるからだろう。

 


『PEANUTS』には「つまらない」「ちっぽけ」等の他に「空っぽ」と言う意味もある。
に潜って生まれる“大地の子”であるピーナツは、莢の中で何処にも繋がれずに「空間から生まれたみたいにしている。

大地の子であり、

空間の子でもある。

取るに足らない様な名前のついたものが、多くの人に愛される超ロングセラーとなり、登場人物達が今なお作品やグッズの姿を借りて世界中を飛び回っているのは、空間からの天意後押しの力となっているからなのである。

 

自由に点滅する豆の神々。

(2017/8/10)