ご多用な方も大勢おられる時期に、えらいボリュームとなりました。

 

誠にあいすみませんが手の空かれた折に、飽きない程度に区切る等されて、各自いい塩梅でご覧下さい。

 

木曜記事はあっさりと仕上げます。

 

では記事へ。

 

《母は強し》

 

再び彼らについて書くとは驚きだったが、大切なことだと上から繰り返し示されたので、2の内容を中心に今一度『グレムリン』について書かせて頂く。

1は丁度クリスマス時期の話。


1でギズモを迎えに来た老爺は、別れを惜しむビリーと心を開いた様子のギズモを見て、いつかビリーもモグワイと暮らせる様になると、素敵な予言を授けて去る。

2ではその結果が現れる。

一旦は離ればなれになったビリーとギズモ。

 


ビリーは本来やりたかった仕事の為に、ケイトと一緒に田舎から、ギズモの居るNYに出て来ている。

二人が働くクランプ・センターは、不動産王ダニエル・クランプ氏が所有する巨大ビル。

慣れない都会暮らしに戸惑う彼らだが、ギズモにも怒涛の展開が。

 

保護者である老爺が亡くなり、1でギズモを売っ払った孫は影も形もなく、古びた骨董品達に混ざって店にひとりぼっち

 


そこに突然の衝撃。クランプが進める都市開発に古いものは不要と、ギズモの居場所は外からじゃんじゃん壊されて行く

崩れる建物から逃げ出してすぐに通りかかった男に捕獲され、彼が勤める研究所があるクランプセンターに連れて来られるギズモ。

所員たちは可愛いと和んだり、音楽に合わせて踊らせたりしていたが、彼らはあくまで研究者。


あっさりと「検査してから解剖!」と予定を立て、ギズモを震え上がらせる

 


保護者の死→居場所の破壊→囚われて死の宣告

散々な目に遭っているが、ここから流れが変わった切っ掛けが素晴らしい。

何の気なしと

第三者。

囚われのギズモは他にすることもなく、何の気なしに普段の調子で歌を歌う

それをビルの各階に出入りしている配達員が耳にして、彼も又何の気なしにそのまま口笛で歌を再生

 


この口笛に気づいたビリーが「どこかにギズモが居るのでは?」と、歌の仕入先を口笛男に尋ねる。

世の不覚者は、知っている人得ている物を操って望む結果を手にしようとあれこれ画策するが、真に状況を変えるのは全体ひとつの流れに沿っ行動である。

全体の流れに沿うと、善意も悪意もない口笛男が、重要な鍵になったりする。

場所が分かったビリーは即行動し、研究所からギズモを助け出す。

この躊躇いのなさフットワークの軽さから気がついたことがある。

 


ビリーには母性がある。

決してギズモに対してだけそうなる訳でなく、両親にも彼女にも他の様々な存在に対しても、彼は寛容である。

懐が深いというか、そして時たま「なかなか出世も結婚も出来ない」とか彼女にこぼしつつも、その瞬間瞬間を生きている

ビリーは人目を避けて入ったトイレで、助け出したギズモとの再会喜ぶ

 

 

“元気だったかい?
(僕に)会いたかった?”

頷くギズモに

 

“僕もだよ”


このやりとりには思わず「すごいな!」と感想が出た。

前作ではギズモを切っ掛けに、故郷の街が大混乱に陥った。

その時グレムリンに襲われた近所の親父なんか神経が参って、最近まで入院してたと言うのに、

 

それはそれ

これはこれ。

 

 

ビリーの強靭なメンタルには驚くばかりだが、ギズモも彼も今を生きている


そして誰のことも責めない。

保護したギズモをケイトに任せた所、彼女はギズモと間違えて水で増えた別のモグワイ、それも相当いかれた奴をを連れ帰ってしまう。

 


そのことを彼女が謝るとビリーは、

“僕がギズモをほっといたからだ”


と、すんなり収める。

ギズモが彼の言いつけを守らず外に出て、そして水を浴びる羽目になっただろうことも、彼は怒らないし責めない。

 


事が起きた理らにあるとした上で、自分を責めてクヨクヨすることもない。

彼にはそうした自由がある。

自他を責めない時に初めて、

真の自由が実現する。

この真実がビリーと言う存在を通して、よく表れている。

 


同様にギズモも、ケイトが間違えて置いてったことを恨んでいない。

彼女がグレムリンの餌食になりかけた時に、颯爽と登場して火の点いた矢を放ち、窮地を救っている。

1でも華麗なドライビングテクニック(と衝突)でビリーを救ったり、ちっちゃなギズモ結構働くのだが、2では体を鍛えて武器も作ってと、地道な努力を重ねて成長する

 


ビリーの母性に育まれたことで、ギズモの成長が起きた。

どんな事態を巻き起こそうと、「それはそれこれはこれ」とあっさり切り替えて、子の存在を常に丸ごと受け入れるのが真の母性全母性である。

全母性が、邪心を炎で焼き尽くすまでになる、童心成長を促したのだ。

ギズモが鍛錬を重ねた末に、彼をいたぶったグレムリンを矢で仕留めるのは作中で一度だけ

 


これも奥深いメッセージである。

ギズモは、強くなったことを誇って執拗にグレムリンを狩ったりしない。

邪心達理不尽な暴力には屈しないと、毅然とした態度を一度きっちり示す、それだけで十分なのだ。

後のことは、全母が昇華する。

 


ビリーは素晴らしい閃きをもとに、グレムリン達を一網打尽にする。

街に平和が戻り、一件落着に安心したギズモはビリーとケイトに言う。

“Go home now.”

(オウチ 帰ロウ)

 


無邪気な童心も一緒に、今こそ全一と言う真の家に帰還する時が来ている。

それにはまず内なる全母性に出会わなければ、始まらない。

不安恐れ、ありとあらゆる意識の歪みが、全母性の前には色をなくす。

まさに母は強しである。

 

 

母性発揮で、素敵なクリスマスを。

(2018/12/24)