「成る程なぁ」

この所、記事でも触れている“人間の物語”を、読み進むにつれ示されるあれやこれやは宮司にとって、不覚と言うものを、と言うものを、そしてそれらのみでは決して知り得ない、についてを、深く、確かに、腑に落とす導きとなっている。

それにしても、ノリが重い。

 


香典片手に呼ばれてもない葬式に参加し続けている様な感じ。時折気分転換に、柔軟ぶらぶら歩きを挟んでいる。

受け取った中でも、ある気づきは殊更、不覚にとって重たいだろうものだった。

作品から学んだことの多くは、直接お目にかかる方達との間で活かされるものであった。

来週記事では気づきの中でそう突飛じゃないだろう、

 

「作品を通して炙り出された、

不覚者が人生上で求めるもの」

 

 

について、書かせて頂くことにする。

本日記事ではその前に、先程の殊更重たいだろうと感じた気づきについてお知らせ申し上げる。

重たいし、容赦ないが、分かり易く、シンプルだからである。

この物語を読んだことのない方には、先に内容をお知らせすることになるので、「そりゃがっかりだ」となりそうなら、最後まで読んでしまってから、少なくとも6巻まではお読みになってからこの先をご覧になっても結構。

 


大丈夫、気づきは逃げない。

出来れば気づきの方で逃げて行って欲しかったと思える程、不覚の意識にとってはきつい内容ではあるが。

この物語には、恐怖と邪悪の化身である様な、強大な力を持つ魔法使いが登場する。

主人公と彼とは共通項も持ちつつ、光と闇、希望と絶望、そうした一対になるものとして描かれる。

 


この恐ろしい存在が、どんな経緯でこの世に生を受けたのか

簡単に申し上げると、魔法が使えない人間である金持ちなハンサムボーイを、純血を誇る魔法使いの家に生まれた「器量良しとは言いにくい」娘が見初め、惚れ薬を使って夫婦になった。

仲睦まじい二人は子を授かり、女はとても男を好いていたので、心を自由にしても気持ちは変わらないだろうと魔法を解いたら、男は身重の女をあっさり見捨てて生家に帰った。

作中には、女の方は男を「深く愛していた」と書かれていたが、「深さ」「愛」も、そこには感じられなかった。

真実、深く愛していたなら、男が留まろうと去ろうとそこには至福があったはずなのだ。

 


物語の中で女は息子を産んで、すぐに世を去る。

書かれ方から、子を遺しての無念な死ではなく、好いた男の子供が産めたことの他に興味がなかった様子が伺えた。

興味とは、人生に対する、もっと簡潔に言えば生きることに対する興味である。

亡くなる前に、彼女が遺した言葉が「この子がパパに似ますように」


自分に似て欲しくなかったのは、容姿のことなのか、魔法使いの古い血筋が背負う運命のことなのか、自らと自らの人生を愛せなかったことなのか、それは分からない。
 
そのどれもであるなら、手に入れたかったものへの憧れと、失ってからもそれに関わり続けたい執着、そして強烈な自己否定の入り混じる、重たい願いだ。

この願いを背負って生まれてきた男の子は、父親によく似たハンサムボーイとなり、母方から受け継いだ魔力父と祖父母を殺し、後に魔法界を震撼させる凶悪な魔法使い、魔王の様な存在となる。

一連の流れを観察して改めて納得出来たのは、恋慕のと、魔術で作った薬、つまりでは愛は生まれないと言うこと。

 


人間の眼で見ると、死んだ哀れな女は一途で健気と言うことにもなりかねない。

だが、人を超えた意識で観ると、元々好き合っていた恋人を連れて家の前を通っただけのハンサムボーイを、そのままに見送ることが出来ず、惚れ薬で恋の矢をねじ曲げて自分に向けさせた娘が、一途は兎も角、健気とは言えない。

一途にしたって、「全一に一途」かどうかからすれば全く的外れで歪んでいる。

の関係が破綻した後に生まれた邪悪な魔王は、

男性性女性性不調和で起きる歪み象徴している。

 


情と術の末路を見て、何につけ既に、がっつり気落ちしたりは出来なくなっているが、それでも軽くしょんぼりした。

うんと煮詰めて極端にしているが、これは紛れもなく人間の物語であり、薄めたような出来事は、人類の歴史で数限りなく起きているのだ。
 
つまりもう、何をしようと焼き直しばかりなのである。

煎じ詰めて結晶の様にしたこのエピソードを目印にでもして、繰り返しは不要であることを腑に落とさなければ、変わることなく崩折れるのみとなる。

さて、嬉しいこともある。

が何か分からない」


と、不本意であるかの様なお嘆きと、一方で免罪符でも得ている様な安心を込めて連呼する方々へ申し上げる。

とは、の大きなヒントがこの記事で洗い出された。

少なくともは、

ではないし、

でもないのだ。

ご自身のなさることがであるのかどうか分からない時には、それがではないかと中立に観察し正直に確かめることをお勧めする。

 

情と術には、思惑あり。
情と術は、思惑なり。

(2019/12/19)

来週は火・金の更新になります。