《個の極み》

 

個の極みとは、自分勝手を極めると言う意味ではなく、個としてどこまでシンプルになれるかと言うこと。

 

昔話でキツネが何か他の姿に化ける時、頭に木の葉を乗せることがある。

 

人間だったり、食べ物だったり、笠だったり、妖怪だったり。
葉っぱ一枚で、何にでもなれる自由自在さ。 

 

そんな変身のアクセントになっていた木の葉だが、変身の自由を存在の自由に置き換えて、葉で体現した者達が居る。

 

 

アダムとイブは、裸を恥じる心から葉を付けて楽園から出て行ったと言われている。


この男達はむしろ重ねていた色々執着や世間体、常識、価値観、コンプレックス、肩書き、主義主張などに支えられたあらゆる(こだわ)を脱ぎ捨て

 

「葉っぱ一枚あればいい」

 

の境地に辿り着いた。

 

この葉っぱは、個の葉と言える。

 

男女2人きりなエデンの園に比べて、かなりの大人数に増えてしまった現代で、要所を押さえた葉っぱは、個別認識の名札代わりになる。

 

同じ人が居ないように、同じ葉っぱもないものだ。
個の認識が出来る、ほんのちょっとの目印さえあれば、後は全部同じ(裸)でいいじゃない、という大らかなメッセージを感じる。

 

「大学合格 社長就任 葉っぱ一枚あればいい」

 

彼が彼だと分かる、ちょっとした目印(葉っぱ)以外は、他のみんなと変わらない

とも言えるし、または、

 

大学に受かるにも、社長になるにも、個と言うちょっとした目印さえあれば、十分だ

とも言える。

 

どちらにしても、何と開けた視界だろうか。

 

勿論、これは意識の話であり、実際葉っぱだけ身につけて過ごす必要はないのだが、やってみたくなる者も居るようだ。
しかも割と大勢。

 

 

上の動画の様に、この葉っぱの境地には国を問わず感銘を受ける人々が沢山居る。
楽しげに歌い踊り、朗らかに笑っている彼らの姿を眺めていて、人類に普段課せられている重圧の大きさを思った。

 

今後、不覚社会へのエネルギー供給が減るにつれて、乱痴気騒ぎも一時的に増加する。
パーティーや祭、イベント、出来る限りはしゃいで表層を(こす)って行かないと、もう熱が足りないからだ。

葉っぱ一枚って、これじゃねぇっつーの。

 

そうした(うわ)(つら)の大はしゃぎとパッと見は似ているようでいて、実際はそれらから『YATTA!!』が完全に抜けている、とわかる一節がある。

 

「すれ違いざま ほほえみくれた 2度と会えなくたっていい 君が居たからLUCKYだ」

 

これ程執着から遠く離れた境地の歌詞を他に知らない。


ともすれば現代音楽は執着自慢大会にすらなるが、その中にあって破格に澄んだ美しさを持つのがこの一曲である。

 

一瞬の出会いを歓びに昇華させる洗練を以て、人々の魂に新しい風を通す。

 

彼らの歌うLUCKYは曲の中で、社長日本代表と言った、人と比べて恵まれた感じで特別にもたらされた幸運を次第に超えて行く。

 

「水飲んだら美味い」とか「陽にあたったらあったかい」とか「ハラから笑ったら面白い」「犬飼ってみたら可愛い」など、本当にシンプルなものに変わり、最終的には「息を吸える」「息を吐ける」ことを、LUCKYだと歌う。

 

幸福の純化である。

 

恒常化し、普遍化し、世に満たす。

それは至福に在らなければ出来ない。

 


It's so easy
(ほんとに簡単なことなんだ)
Happy go lucky
(幸せでいることがそのまま幸運になる)
We are the World
(僕らは世界そのものなんだよ)
Everybody say YATTA!
(みんなで、“「やった!」”)

 

 

 

我々は全員、全母である虚空の歓び「結び」なのだ。
つまり今ここにある全てが、全母の「YATTA!」である。

 

そして「We did it」の通り、それは既に為されている。
だから「YATTA!」と、過去形なのだ。

 

それは既に為されている
原初の創造時に、既に織り込まれている

 

つまり

 

我々は既に為されたものを、まっさらな意識で、存分に味わうしか本来することがない。

 


それは、意識が歪めてしまわなければ、最も素直で美しい現われ方をする。


「みんな一緒だ HAPPYだ」という歌詞がある。


この「一緒」とは「距離的に側に居る」というより「同じ」の意味に感じる。

本質はみんな同じ、そして全一。だからHAPPY。

そしてHAPPY GO LUCKY。実にシンプルだ。

 

宮司も初めて耳にした時には首を(かし)げたのだが、

 

「真っ直ぐ立ったら 気持ちいー!!」

 

という、知らずに聴いたら最も謎に思えるだろう歌詞がある。

 

これは光の柱が真っ直ぐな状態の心地よさが表れている。

 

 

我々端末に優劣はなく、全て同質。

同質のもの達が毎瞬虚空に溶けて、毎瞬物理次元に蘇る。


その時、常に新しい葉っぱが1枚あればいい

 

それを彼らは教えてくれているのである。

最も薄着の神々。

(2016/12/26)