《かけてもひいても》
「みんなを引っ張って行って下さい」
「駆け引き次第でどうにかなるかも」
「引き際が肝心ですね」
「押してもダメなら引いてみな」
こんな感じで、賑やかな不覚社会は様々な場面で「引く動き」を多く使う。
駆け引きの「ひき」は、「退き」の意味を持ち、戦場で、時機を見計らって兵を進めたり退 いたりする動きを示した。
何だってそんなことをするのかと言えば、戦場に相応しく、勝つ為である。
商売や交渉・会議と言った活動を「戦い」と見なす時、
相手の出方や状況に応じて自分に有利になるように処置すること
更に、
全体から分けた特定の一部が、利を得ようとする意図
これが、駆け引きには必要になる。
どれもエゴがあって初めて出来ることである。
全体一つの流れは、方向としてエゴありきの動きから離れ続けているので、駆け引きすることもどんどん難しくなって行っている。
難しいことを粘って実現しようとするので、心身に負担がかかる。
そして、それぞれ求める方向がバラバラな意図を、各自手元に引き寄せようとしているので、こんがらかり易い。
力いっぱい引いた先に待っているのは意図の千切れか、もしくはへとへとになった状態。
強引に引っ張ることが出来た場合も、引っ張られた側の恨みを買うので、しわ寄せが来る。
引っ張ればその分、何処かがたるむのだ。
どこにも意図を伸ばさず、静かに独り立つ時、全方位に力が満ちて来る。