《押して忍ぶと》
桜が咲く時期であることも手伝ってか、街に海外からの観光客と見られる人々の姿が増えた。
その中で、Tシャツの背に手裏剣の様なマークと共に、大きく
押忍
と書いてあるものを着た男性を見かけて
「何処で買うの?」
と興味が湧いた。
外国の人の好みに合った日本グッズのお店があるのだろうか。
同時に、
「押忍ってどう言うこと?」
ともなった。
押忍は応援団とか武道を修める人々が使う、一種の業界用語であり、忍者は押忍と言わない気がする。
それを押忍Tシャツの人に言ったら
「え?!だってこの字、シノビでしょ?!」
と驚かれるかも知れない。
その仕事に就いたことがないので明言は出来ないが、シノビはマジで静かにしておかないと命に係わるのじゃないだろうか。
対して、押忍を言う時には照れやはにかみ、遠慮があったりしてボリュームが足りないと
「声がちいさ~い!」
と、なりそうだ。
押忍について興味が出て調べた所、『8時だョ!全員集合』でいかりや長介が客席に向かって言っていた「オイッスー」はこの変化形であると言う解説を発見。
そう言えばあれにも「もいっちょ、オイッスー」と、会場の盛り上がりを求める動きがあった。
盛り上げる動きと忍びと言う、水と油の様なものが一体となった押忍。
押して忍ぶって一体どう言うことなのか。
押して忍ぶことにより何がどうなるのか。
深まる謎に興味が加速し、押忍Tシャツの人に感謝した。
押忍の出所については諸説ある。
旧海軍にて「おはようございます」が簡略化されたと言うもの。
戦前、京都にあった武道専門学校で「おはようございます」が「おはよーっす」となり、「おわーす」「おす」と変化して行ったと言うもの。
佐賀藩校所属の青年武士達の間で、お互いに励まし合う意味として挨拶代わりに「押忍」と声を掛け合ったところから広まったと言うもの。
拓殖大学の空手部に所属する部員達の間で、日常的に交されていた言葉が広まったと言うもの。
共通しているのは同じ修練を積む男性の間で使用される、と言うこと。
押とは、そして忍とは。
調べていて不意に幾つかの情報パーツが意識の中で見事に合わさり、理解となって「おぉ!」と驚いた。
それについては来週記事にて書かせて頂くことにする。
縮まった、目覚めの挨拶。
(2023/3/23)