《解く歓び》
ひょんなことから大量の古い書類を片付ける手伝いをしているのだが、これが中々面白い。
作られた当時には、とても重要とされていた情報。
それを判読出来ないサイズの紙片に細断する。
細断機に入れる前にも準備が要る。
太い紐やホチキス針で留められている部分を取り除く、下ごしらえのようなものを行う。
その時に何とはなしに、どんな書類なのかを目にすることになる。
シンプルに紙が集まっただけの状態にした後、小分けにして機械に差し込むと、飲み込んで行く様に紙がどんどん消えて行く。
紙に書かれた内容も消えて行く。
当時の出来事、そこに付随する人の思考や感情、数値、金額、規則や契約、社会通念。
名前を無くし、内容を無くし、書類としてのかたちも無くした紙の粒を触ってみると、細断した時の熱で生まれたてのように温かい。
ちっちゃな紙としては、今まさに生まれた所なので、生まれたてと言うのも間違いではない。
前のかたちを手離さないと、なれないかたちもある。
何かがあると言うことは、何かがないと言うこと。
愉快だなぁと紙の粒作りを楽しんで、帰る時になってふと気づいた。
「照明換えた?」となる程ではないが、空間がすっきりとして、僅かに明るくなっている。
古いかたちや情報によって保たれていたものは、実は大きかったのだと頷いた。
そして何もない空間そのものは、全く古くならない。